『エピデミック』
2008-01-05


amazonで予約購入し、一気に読了。おもしろかった。

房総半島の先端のとある田舎町で未曾有の感染症が発生する。主人公の科学者が、いかに感染ルートを特定し、感染の広がるのをくい止めるか、というストーリー。

感染源を追いつめる科学者の武器は『フィールド疫学』。現場を歩いて拾い上げたさまざまな事象を感染源として仮説を立て、統計的手法でその仮説の検証、棄却を繰り返しながら真実に近づいていく。その過程は、地味だけどミステリを読むようなスリルがある。著者の川端裕人さんいわく『疫学小説』なのだそうだ。まさに疫学の考え方、おもしろさを啓蒙するような小説だと思う。

登場人物が科学者たち、脇役、みな個性的でキャラが立っているのがいい。「確率密度の雲の中で持ちこたえる」とか「人間は意味の真空状態を嫌う」とか、なかなかメモしておきたいセリフがたくさん出てくる。どうも最近、科学者は「ヘンコで、なにをやってるのかわからなくて、裏ではなんか悪いことをしている」ように描かれがちだ。そんな中で、川端さんはきちんとした取材に基づいて、科学者をかっこうよく魅力的に小説に書いてくれる数少ない作家さんだと思う。

しかし、帯に書かれたハリウッド映画のような宣伝文句はもうちょっとなんとかならないのかしらね。

[カンソウ]

コメント(全0件)
コメントをする


記事を書く
powered by ASAHIネット